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クラウド時代の申し子たち

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IT業界ではクラウド普及に伴い、スマートフォンや、自動車も冷蔵庫などもインターネットにつながって、

情報をやりとりしたり連動したりするIoT(Internet of Things)が話題ですが、

今後、最も期待の大きいIoTが実は波乱の種になるかもしれません。

長くIT業界に身を置く立場として、最近の業界動向などを整理してみます。

IT受託業は様々な業務を受注します。ソフトウエア受託開発、情報処理、システム運用管理、

技術者派遣、コールセンターといった業務です。

その国内市場規模は、ざっくり3万社で売上高は20兆円、就業者は約100万人。

株式を公開しているのは約200社超で業界全体の1%にも満たないものの、

産業全体の売上高の4割弱を占めています。

つまり、IT受託業は典型的な中小企業の集まりで、1%程度の企業を頂点に、

ユーザーが発注した案件が大企業から中堅、中小へと階層化され処理されています。

この業界内の問題は、各階層で伝言ゲームが行われるとスペックが正確に伝わらず、

加えてユーザーの要望も曖昧なことが多く、開発後のトラブルが多く発生すること。

ソフトウエアは目に見えないので、あとからの修正が難しいのです。

もうひとつの問題は、利益の配分機能を果たしていた階層の仕組みが、利益争奪の仕組みに変わったこと。

元請けは受注総額の2割程度をまず自社の利益として確保し、残りの予算で外注を使います。

孫請け、ひ孫請けの中小・零細IT受託会社の低減幅はもっと大きくなります。

IT受託業は「技術が人に付いている」ために、人依存が強い技術者派遣に陥りやすく、

派遣元はコストダウンを図って正社員から派遣社員へのシフト化を図ります。

その対価は技術者一人当たり月額(人月)で積算され、そこから給与が支払われます。

以前は就業者の給与は経費でしたが、現在はコストに位置付けられています。

利益を増やす手っ取り早い方法はコストを下げることなので、多くの企業が就業者の給与上昇を抑制し、

非正規社員を増やしています。正規雇用者の給与は増加傾向ですが、

就業者全体に占める非正雇用者の率は増えているのです。

給与を下げずに利益を増やす、つまりIT受託業を高度化するには、

システム構築やソフトウエア開発に工学的手法を導入したり、

ITサービスの自動化・機械化を図ったりすることが必要です。

装置産業化することで生産性を上げるのは産業革命以来の鉄則ですが、

IT受託業は正反対に動いているのが現実です。

人を増やせば一定に売上高が増え、売上高が増えれば利益も一定に増えるという

成功体験が積み上がる中で現実は、就業者一人当たりの売上高は減少しています。

ユーザーのシステム開発は、開発プロジェクトをいくつかの工程に分けて、

前工程が終わらないと次の工程に進めない「ウォーターフォール」型の開発スタイルは変わりませんので

IT受託の仕事はなくなりませんが、以前より儲けは少なくなっています。

それだけに工学的手法の習得で生産性を高めること、ユーザーとダイレクトな関係を作ること、

技術特性を生かした分業体制を整えることなどが益々重要になります。

IoTは、今までのIT技術と較べると、センサーの普及度が決定的に違います。

2010年まで一般の消費者が持ち歩いていたのは携帯電話(いわゆるガラケー)でしたが、

それがスマートフォンになり、自動車をはじめ、さまざまな機器にセンサーが装備されています。

加えて映像認識とデータ解析の技術が高度化しています。

IoTの事例でわかりやすいのは、センサーと信号処理プログラムを組み合わせた自動ドアやETC、

Suicaに代表される交通系ICカードです。より高度なシステムとしてデジタル・サイネージがあります。

見かけは動的なコマーシャルを映し出す大画面の液晶ディスプレーですが、

その前を通過する人のスマートフォンにアクセスして、

性別や年齢、住所などの情報を瞬時に収集することも不可能ではありません。

すでに実用化されているのは、街中を往来する人の中から条件に合う人を探し出して

ファストフード店の割引クーポンをスマホに送信されたり、

アプリをダウンロードして案内板にスマホをかざすとより詳しい情報が表示されたりする仕掛けです。

スマホ・アプリとWi-Fi、ビッグデータの組み合わせがポイントです。

一方で、機械・器具メーカーがしのぎを削っているのが、自動運転やロボットの技術です。

センサーと画像解析、自動制御、人工知能などの組み合わせで、

たとえば工場のさまざまな生産機器が相互に情報をやり取りして、

無人工場が実現(M2M)します。もちろん全体を監視・管理する要員は必要ですが、

3000人が勤務していた工場が300人で運営できるようになった実例もあります。

しかし、こうした新しいIoTが普及していくなかで、IT受託業が得るチャンスはほとんどありません。

というのは、現在のIT受託業の多くの企業が取引を持っているのは、ユーザー企業内の情報システム部門だからです。

一方で、IoTは企業内情報システム部門が関与しません。

集客や販促にIoTをどう活かすかはマーケティング企画部門が担い、

M2Mは工場の生産管理部門が立案します。

ユーザー企業内の情報システム部門は、手続き型の業務フローに基づく静的な管理業務システムは得意ですが、

状況に応じて限定的に情報を更新する動的アプリケーションをこなす人材は外注先も含めてほとんどいません。

するとユーザー企業内の情報システム部門やIT子会社とのみ取引しているIT受託業を、

IoT/M2Mの案件の大半が素通りするでしょう。システム運用管理業務はクラウドへの移行で減り、

アプリケーションの開発は保守と一体化した派生開発に移行します。

景気の回復とともに就業者を無防備に増やしてしまったIT受託業は中小を中心に、

太古の恐竜のように突如滅びてしまう会社が続出することも懸念され、

引いては職を失うITエンジニアが大量発生する可能性は否定できません。

世相は厳しいですが、当社はこうした状況においても業界の中でイニシアティブを握る鍵を持っています。

コンセプトは当社が創業以来ビジョンに掲げる「すりあわせ」の技術。ここでの「すりあわせ」とは、

マーケテイング部門などからの曖昧な仕様要求を「すりあわせ」して本物の顧客満足度を高めること。

既存の直受け案件はもちろん、より顧客に近い部門も巻き込み、

先読みのコンサルティング要素を満たすレベルを保つことで、

結果的に顧客の戦略思考を踏まえたシステム開発を担うことができるのです。

私は当社のクラウドの申し子たちを信頼しています。

お客様のお力に沿えるよう努力する姿を是非、皆様にお見せしたいのです。